これは病気や治療そのものを主役にした症例紹介ではありません。その子がどのような家族に愛され、どんな日々を過ごし、病気や老いとどう向き合いながら一生を歩んだのか。一頭一頭の「暮らし」と「家族との時間」を大切にしながら、その歩みを一つの物語としてみなさまに伝える・紹介することを目的としています。
家族のそばで過ごした16年。海ちゃんの物語

くりくりした目が印象的な、チョコ色のチワワ、海ちゃん。ご家族と離れることが苦手で、ペットホテルに泊まると、寂しくて鳴き続けたり、ごはんが進まなくなったりすることがありました。病気の治療を続けるときも、年齢を重ねてできることが変わったときも、海ちゃんにとって「家族のそばにいること」は、支え方を考えるうえで大切なことでした。ご家族とともに過ごした、16年の歩みをご紹介します。
お父さん、お母さん、空ちゃんと海ちゃん

海ちゃんは、2010年4月25日生まれの男の子。お父さん、お母さん、そして3歳年上の空ちゃんと暮らしていました。空ちゃんとは血のつながりはありませんが、ご家族にとっては、お兄ちゃんと弟。ふたりと2頭の暮らしでした。
海ちゃんをお家に迎える前、まずは空ちゃんとお試しで会わせてみたそうです。すると、ふたりはすぐに意気投合。その姿を見て、ご家族も安心されたといいます。一緒に暮らし始めてからも、ふたりは仲良し。ご家族の言葉を借りると、空ちゃんは「まさに長男」、海ちゃんは「まさに弟」という関係だったそうです。血のつながりはなくても、それぞれの個性が自然になじんだ兄弟として、ご家族との日々を重ねていきました。
当院に初めて来てくれたのは、2017年4月です。病気の治療ではなく、日常のお手入れのための受診でした。その後も、健診やケアを通じて、海ちゃんの成長と変化を見守る時間が続いていきました。
海ちゃんをお家に迎える前、まずは空ちゃんとお試しで会わせてみたそうです。すると、ふたりはすぐに意気投合。その姿を見て、ご家族も安心されたといいます。一緒に暮らし始めてからも、ふたりは仲良し。ご家族の言葉を借りると、空ちゃんは「まさに長男」、海ちゃんは「まさに弟」という関係だったそうです。血のつながりはなくても、それぞれの個性が自然になじんだ兄弟として、ご家族との日々を重ねていきました。
当院に初めて来てくれたのは、2017年4月です。病気の治療ではなく、日常のお手入れのための受診でした。その後も、健診やケアを通じて、海ちゃんの成長と変化を見守る時間が続いていきました。
健診と、日々の小さな変化から
2019年の定期健診で、海ちゃんに僧帽弁閉鎖不全症が見つかりました。心臓の弁がうまく閉じず、血液が逆流する病気です。そのときはまだ初期で、症状はありませんでした。ご家族は、その後も定期受診を続けてくださいました。
2020年9月になると、水を飲む量が増え、おなかがふくらみ、後ろ足の震えやフケ、脱毛も見られるようになりました。血液検査では肝臓の数値にも変化があり、ホルモン検査や超音波検査で詳しく調 べた結果、「下垂体性副腎皮質機能亢進症」と診断されました。体を調整するホルモンのひとつ、コルチゾールが過剰になる病気で、クッシング症候群とも呼ばれます。海ちゃんには、脳の下垂体からの指令に関わるタイプの病気がありました。
2020年9月になると、水を飲む量が増え、おなかがふくらみ、後ろ足の震えやフケ、脱毛も見られるようになりました。血液検査では肝臓の数値にも変化があり、ホルモン検査や超音波検査で詳しく調 べた結果、「下垂体性副腎皮質機能亢進症」と診断されました。体を調整するホルモンのひとつ、コルチゾールが過剰になる病気で、クッシング症候群とも呼ばれます。海ちゃんには、脳の下垂体からの指令に関わるタイプの病気がありました。
毎日の薬と、おいしく食べるためのケア

診断後は、内服薬による治療が始まりました。ご家族が毎日の投薬を続けてくださり、少しずつ毛艶がよくなり、フケもなくなって、元気が戻っていきました。通院の日だけでなく、ご自宅で重ねられたケアが、海ちゃんの生活を支えていました。
2021年7月には、お兄ちゃんの空ちゃんとのお別れがありました。同じ年の9月には、海ちゃんに三尖弁閉鎖不全症も確認されました。こちらも心臓の弁に逆流が生じる病気です。
持病と付き合いながら迎えた2022年9月、ご家族は全身麻酔での歯科処置を決められました。当院では2018年に続く、2度目の処置でした。高齢で持病もある中、ご家族にとっては勇気のいる選択でしたが、海ちゃんは処置を終え、その後はおいしくごはんを食べられるようになりました。
2021年7月には、お兄ちゃんの空ちゃんとのお別れがありました。同じ年の9月には、海ちゃんに三尖弁閉鎖不全症も確認されました。こちらも心臓の弁に逆流が生じる病気です。
持病と付き合いながら迎えた2022年9月、ご家族は全身麻酔での歯科処置を決められました。当院では2018年に続く、2度目の処置でした。高齢で持病もある中、ご家族にとっては勇気のいる選択でしたが、海ちゃんは処置を終え、その後はおいしくごはんを食べられるようになりました。
年齢とともに、検査の受け方も考え直す
2024年に入ると、食欲にむらが出たり、昼と夜の生活リズムが逆転したりするようになりました。認知機能の衰えに伴う症状が見られ、以前と同じように検査を受けることも、海ちゃんには難しくなっていきました。そこで、検査で確かめたいことに加え、海ちゃんがどのくらいの時間なら受けられるかを考え、持病の見守り方を調整しました。
心臓については、複数の検査を行う負担を避け、短時間で済むレントゲン検査で確認できる範囲を評価しました。また、食事や投薬の時刻が一定しなくなり、予定した条件でホルモン検査を行うことも難しくなりました。海ちゃんの場合は、その検査を見合わせ、血液生化学検査などで体の状態を確認していきました。レントゲンだけで心臓の状態をすべて把握できるわけではなく、血液生化学検査がホルモン検査の代わりになるわけでもありません。確かめられることに限りがある中で、海ちゃんの負担とご家族との暮らしを考えた、個別の対応でした。
心臓については、複数の検査を行う負担を避け、短時間で済むレントゲン検査で確認できる範囲を評価しました。また、食事や投薬の時刻が一定しなくなり、予定した条件でホルモン検査を行うことも難しくなりました。海ちゃんの場合は、その検査を見合わせ、血液生化学検査などで体の状態を確認していきました。レントゲンだけで心臓の状態をすべて把握できるわけではなく、血液生化学検査がホルモン検査の代わりになるわけでもありません。確かめられることに限りがある中で、海ちゃんの負担とご家族との暮らしを考えた、個別の対応でした。
朝の散歩と、食べる時間を大切に

ご家族は、その後も健診やトリミングに定期的に通ってくださいました。
2026年7月、認知機能の衰えによる症状が強くなってきたときには、朝の散歩で太陽の光を浴びることをお伝えしました。その後、夜鳴きがなくなり、ごはんもしっかり食べられるようになった時期がありました。散歩だけの効果とは言い切れませんが、生活の整え方も一緒に考えていた頃の変化でした。
一方で、食事に薬を混ぜると、ごはんそのものを警戒し、食べなくなってしまう心配がありました。 ご家族は家族会議を重ね、2026年9月をもって、すべての投薬治療を終えたとお話しくださいました。治療を続けることと、安心して食べられる時間を守ること。その両方を考えた末の、ご家族の判断でした。薬を続けるか、減らすか、終えるかは、その子の状態によって異なります。迷いが生じたときに、暮らしの中の困りごとから相談できることも、大切にしたいと考えています。
2026年7月、認知機能の衰えによる症状が強くなってきたときには、朝の散歩で太陽の光を浴びることをお伝えしました。その後、夜鳴きがなくなり、ごはんもしっかり食べられるようになった時期がありました。散歩だけの効果とは言い切れませんが、生活の整え方も一緒に考えていた頃の変化でした。
一方で、食事に薬を混ぜると、ごはんそのものを警戒し、食べなくなってしまう心配がありました。 ご家族は家族会議を重ね、2026年9月をもって、すべての投薬治療を終えたとお話しくださいました。治療を続けることと、安心して食べられる時間を守ること。その両方を考えた末の、ご家族の判断でした。薬を続けるか、減らすか、終えるかは、その子の状態によって異なります。迷いが生じたときに、暮らしの中の困りごとから相談できることも、大切にしたいと考えています。
最期まで、ご家族のそばで
2026年10月に入り、海ちゃんの食欲は大きく落ち、血液検査の結果、腎不全が確認されました。16歳という年齢と、ご家族と離れるのが苦手だった海ちゃんの性格を踏まえ、ご家族と相談し、入院ではなく通院で治療することになりました。およそ1週間、ほとんど毎日のように点滴に通い、ご自宅ではご家族が食事を介助してくださいました。そしてその日の午後、海ちゃんはご家族に見守られながら旅立ちました。
家族のそばにいた、海ちゃんの日々

お父さん、お母さん、空ちゃんと暮らした日々。持病の治療を続ける中で、おいしくごはんを食べられた時間。年齢を重ねてから、朝の光を浴びて歩いたこと。海ちゃんの16年には、ご家族と一緒に過ごした、そんな日常がありました。毎日の薬を続けたときも、食べる時間を大切にしたいと家族会議をしたときも、ご家族は海ちゃんの様子に目を向けていました。最期の治療を通院で行ったのも、家族と離れることが苦手な海ちゃんの性格を大切にした選択でした。
くりくりした目の、チョコ色の海ちゃん。体の状態や必要なケアが変わっても、ご家族にとって大切な存在であることは変わりませんでした。海ちゃんの歩みを振り返ると、ご家族がその子らしさを受け止め、一緒に過ごす時間を大切にしていたことが思い出されます。
一生を診る。一生を支える。
澤動物病院 神奈川動物医療センター
※本記事は、掲載内容についてご家族の同意を得たうえで、実際の診療経過をご紹介しています。記事内に記載された検査・治療・ケアの内容は、すべての動物に一律に当てはまるものではなく、その内容を推奨するものでもありません。治療方針は、動物の状態、年齢、併存疾患、ご家族の希望などによって異なります。気になる症状や治療については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
くりくりした目の、チョコ色の海ちゃん。体の状態や必要なケアが変わっても、ご家族にとって大切な存在であることは変わりませんでした。海ちゃんの歩みを振り返ると、ご家族がその子らしさを受け止め、一緒に過ごす時間を大切にしていたことが思い出されます。
一生を診る。一生を支える。
澤動物病院 神奈川動物医療センター
※本記事は、掲載内容についてご家族の同意を得たうえで、実際の診療経過をご紹介しています。記事内に記載された検査・治療・ケアの内容は、すべての動物に一律に当てはまるものではなく、その内容を推奨するものでもありません。治療方針は、動物の状態、年齢、併存疾患、ご家族の希望などによって異なります。気になる症状や治療については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。